見終わったあとしばらく皇居の周辺を歩いた。大通り沿いのベンチに座り、人波を眺めながらしばしぼけっとしていた。例えばこうしてベンチに座って人波を眺めていることと、部屋でベッドに寝そべって天井を眺めていることとは一体何が違うのだろう。
通り過ぎる人々を眺めていたら、欠点ばかりに注目していることにはたと気が付いた。自分の欠点はまさにこれだ。こんな欠点とは今すぐおさらばしよう。
これまでに経験したことのない重大な仕事を任されたとき、どうしても恐怖心に負けて逃げ出したくなってしまう。期待に応えられず失敗して傷つくのが恐い。自分がたいした人間でないことは自覚しているけど、それが他人に知られてしまうのが恐い。すぐに立ち直れるほど強い人間ではないことも分かっているからこそ余計に。
これまでも自分にできることだけしかやってこなかった。逃げてばかりいるように見える人でも、いざというときにはちゃんと立ち向かっている。自分との違いはまさにそれ。私の場合はいざというときでも上手いこと逃げ出している。逃げることに関しては紛れもなくプロだ。これだけは自信を持って言える。
成長には困難が欠かせないとユングは言う。
困難は障害ではなく課題とアドラーは言う。
もしそうだとするなら、困難に対するこの恐怖は一体何のためにある。しかしもう観念する他にない。これ以上逃げることはできないのだから。逆に考えれば、これは相手に自分の本当の実力を分かってもらう良い機会かもしれない。そうすればもうこれ以上逃げる必要もなくなる。
17時ごろ東京駅を後にして、最寄駅の開店したてのルノアールに寄った。客はまばらだった。週末の夕暮れはいつだってこんな風にセンチにさせてくれる。