葛藤、羨望、諦念、恐怖、劣等。

 

私たちを真に突き動かすのはこのような後ろ向きの感情である。見たくないからといってフタをしてはいけない。後ろがどちらにあるかを知らなければ前を向くことはできない。


どうしても直視することが難しいとき、芸術が大いに手助けしてくれるだろう。同じことで悩んでいる人は少なからずいるものだ。

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国立近代美術館フィルムセンターまでSF・怪獣映画の世界展を観に行ってきた。これほど面白い常設展には初めて出会った。日本映画の歴史を一から体系的に知ることができてとても興味深かった。

特に印象的だったのは「狂った一頁」という5分ほどのサイレント映画。音のない世界で感情を表現するのは並大抵のことではない。観る側にとっても、時代背景や文化に関する最低限の知識が要求される。

表現とはつまり渇望と絶望の昇華である。それから生まれる芸術は本来暗くみじめで醜いものであるはずだ。にも関わらず、これほどまでに惹かれてしまうのは一体どうしてなのだろう。

 

それはたぶん、自分の中にも同じものがあるからなのだと思う。