鳥居をくぐると空気が一変した。ひんやりとした林道がひたすらまっすぐに続いていた。ゆっくりと歩きながらさざれ石や奥宮、要石などを見て回った。坂を下りると御手洗池と甘味処があった。
御手洗池を眺めていると横からふとおじさんに話しかけられた。御手洗池のことや鳥居のことなどを丁寧に説明してくれた。そして手で触れることのできるご神木があることを教えてくれた。
再び坂を登り言われたとおり奥宮のすぐ裏へ回った。そこには樹齢600年の大きな杉の木があった。両手を幹に付けて目を閉じた。しばしの静寂が流れた。自然の中では怒りや悲しみといった感情は不思議と一切出てこない。本当に幸せなひと時だった。
その後お礼を言いにおじさんの元へ戻ると、水中鳥居まで車で案内してもらえることになった。聞くところによるとボランティアでガイドをやっているらしい。理想的な老後の過ごし方だと思った。最後は駅まで送っていただいた。この縁と恩は絶対に忘れないようにしよう。
17時ごろ鹿島神宮を後にした。東京駅に着いたあとしばし駅周辺を散策してカフェに入った。そのあと新橋方面まで歩いた。コリドー街は相変わらずぎらぎらしていた。
さっさと通り過ぎて新橋駅へと向かった。最寄駅に着いてからインドカレー屋へ。ふと時計を見るとすでに22時を過ぎていた。
色々なものを見て、色々なことを感じ、色々な人に触れることのできた一日だった。一生の間に出会える人数は本当にごくわずかだ。だからこそ、構え過ぎずもっと気軽に向き合っていこうと思った。