銀行口座の解約をしに郵便局と信用金庫へ。郵便局では物腰柔らかい中年の女性が対応してくださった。団体名義の振替口座という特殊な事情もあってそれなりに時間がかかった。

 

毎度のことだがこういう事務的な手続きはどうにも緊張してしまう。まるで面接試験を目前に控えた就活生のような心境。だがこれは試験でもなんでもない。ミスっても実際別にどうってこともない。それにも関わらず頭の中はちゃんとしなきゃいけないという考えで満たされている。まさにViva La 自我。

 

席に座り待っている間、様々な人がやってきた。その中で友人のような感覚で局員と話す女性がいた。印鑑を忘れたらしく笑いながら大声であちゃーと言っていた。

 

私はただただ感心してしまった。失敗しちゃダメだーともじもじドキドキしている自分が本当に滑稽に思えた。その人がいる間中、店内はほっこりとした雰囲気に包まれていた。

 

そこでようやく理解した。要するに私はその場の雰囲気にとんと呑まれてしまっていたのだ。事務的で冷静沈着な局員に合わせて自分もちゃんとしなきゃいけないと思っていた。

 

そこへかのクラッシャーが訪れた。そして見事に場の雰囲気を一変させてしまった。雰囲気は呑まれるものじゃない、作り出すものだ。彼女から学んだその偉大な教えをもとに私は今日も生きていく。

 

終わりかけたがまだ話は続く。

 

郵便局での神秘体験を終えたあと、信用金庫へ向かった。そこでは同年代くらいの若い女性が対応してくださった。番号札を取るときにちらっと見て「あ、これはまずい」と思った。

 

その後席に座り順番を待っている間中、心臓がバクバクしていた。端的に言って若い女性は苦手だ。彼女らは決しておばさま方のように甘やかしてはくれない。男ならちゃんとしろ、という無言の圧力が全身から溢れ出ている。そこでちょっとでも頓珍漢なことを言えば最後。お客様からブタ野郎へと成り下がる。

 

ある意味それはご褒美かもしれない。それを求めてあえてドジ男を演じるピエロ野郎だっているだろう。しかしだ。私は何もそういう遊戯を求めてここに来たわけではない。あくまで口座の解約をしに来たのだ。

 

ぴーんぽん。そこに諸行無常の響きが鳴る。私は処刑台へと一歩一歩ゆっくりと足を進める。

 

今日はどうされましたか?処刑執行人にそう問われると、私は澄ました顔で「口座の解約をお願いします」とはっきり答えた。やー偉いね。やればできる子。

 

見事2つの難関を克服したあと、日高屋へ。颯爽と店内に入りどかっと席に座り注文を…

店員「アルコール消毒おねしゃーすー」

店内の客たちからじろりと見られつつ、肩をすぼめてスプレーをシュッシュっとする私。

 

無論、これは全て神のお戯れである。