あの日もし作文の宿題を出されなかったら、私は今こうして小説を書いていなかったと思う。そのときのことは今でも鮮明に覚えている。私は小4だった。少し振り返ってみよう。
その作文の内容は自由で、とにかく1週間以内に原稿用紙2枚程度書いてくればいいとのことだった。私は無難に読書感想文を書こうと思っていた。この前読んだズッコケ三人組のことでも書けばいいかーなんて余裕の笑みを浮かべながら。それで周りの友人に聞いてみると意外にも小説が多かった。それなら自分も小説を書いてみようかしらと犬のフンみたいにコロッと心変わりした。
5日経っても白紙のままだった。土日で終わらせればいい。希望が見えた気がした。それから宿題の提出日を迎えた。机の上には真っ白な原稿用紙が2枚。提出した人は体育館で自由に遊んでOKですよと担任が言う。それを先に教えてくれていたら。
私は渋々教室に居残り小説を書き始めることにした。教室には私以外に5人いた。小説を書くぞと息巻いていた友人たちである。こうして私は人生で初めての小説を書いた。内容は勇者が仲間とともに海、山、陸の怪物を倒して最後に魔王を倒すといった感じの王道冒険ファンタジーものだった。実は裏ボスがいてそいつは仲間の1人と内通しているという設定もあった。
最初は早く体育館で遊びたい一心で書いていたはずだったが、次第に書くこと自体が楽しくなり始めていた。周りの友人から早く書いて体育館行こうぜと誘われても、こっちの方が楽しいからいいやと断ってしまうほどに。誰もいなくなった教室で私は1人夢中になって書き続けた。10枚を超えたあたりだろうか。担任の元へ新たな原稿用紙をもらいに行くと、そろそろ終わりにしましょうとティーチャーストップがかかった。
あのときの心踊る感覚が未だに忘れられない。できることならもう一度味ってみたいと思う。
●今日のこと
午前中はブログを書き、午後はドトールでjbの続きを書く。引き続き回想の場面。最初にやったバイトの話。帰り道、見事なマジックアワーに出くわす。本当に綺麗だった。