Nさんと一年ぶりに会う。予想通り元気でそしてやはり噛み合わない。こちらが言ったことを否定するくせに口を開けば同じようなことを言う。それを肯定すれば今度はしょうがないですよと何故か私の方が諭されている。

 

彼との間に対話は成立しないと改めて気付かされた。いや彼に限ったことではない。私が出会ってきた人々は大抵こんな感じだ。人間嫌いになるのも仕方のないことだった。

 

実際私はそこまで対話を必要としていなかったのだと思う。自分のことを話すのが苦手な人はただ相手の話に耳を傾けるしかない。どれほど待っても相手が話を振ってきてくれることはない。向こうは向こうで話をするのに夢中なのだから。

 

分かり合えることなど絶対にないと思い至ってからは共感したいと思うことさえしなくなった。私たちは同じ物をそれぞれ別の見方で見ている。あなたの青と私の青はきっと違う。その違いを楽しめる人はほんのわずかだ。ほとんどの人は争いの種にしてしまう。

 

N氏と次に会うのはいつになるだろう。その頃にはもう、私は実家を離れているだろうか。