砂浜の先に岩場があってそこに何人かいるのが見えた。近付いてみたら蟹を取っていた。Kは遠くの階段に座って待っていたが、戻る頃にはもう立ち上がっていた。熱いのと痛いのとでもう限界とのこと。
Kがどこか横になれる場所ない?と聞いてきた。ふと港の2階に背もたれのないベンチがあることを思い出し、そこへ行こうかと提案。来た道をまた引き返した。
ベンチは幸い空いていたが、すぐ横が従業員の事務所というのを気にしてKは横になろうとしなかった。見てないから大丈夫だよと言うと恐る恐る横になる。私はキンドルを取り出してしばし読書に耽った。
ここからはあっという間に時間が過ぎていった。11時20分頃、チケットの半券に必要事項を記入するため1階に降りた。書き終えるとKは一服しに外へ消えていった。
埠頭に停まっているジェット船まで歩いた。帰りは下の階の席だった。結構揺れたが、あっという間に着いてしまった。竹芝ターミナルに着いたのは13時半ごろ。そのまま川崎に戻りそばを食べて解散した。
別れ間際に「ありがとう」と声をかけると、いつものように「おう」とだけ言って足早に去っていった。次会うのはいつになるだろう。たぶんしばらくはやって来ないだろう。
結論として、伊豆大島は一人で行くべき場所だった。基本的には宿泊先でだらだらと過ごして、思い立った時にぷらっと外へ出るといったような過ごし方が合っている。
あくせくしているとすぐにやることが無くなってしまってグダグダになる。私は全然問題なかったがKはきっと退屈していただろう。せっかく休みを取ってもらったのに何だか悪いことをしてしまった。
普段私もKのような態度を取ってしまっているかもしれないと自省する良い機会にもなった。旅行に出る前、母とたまたま「ごめん」と「ありがとう」について話をしていた。
曰く、最近一人暮らしを始めた一回り下のいとこがその2つの言葉を欠かさずに言うということだった。この2つだけでどれほど会話が円滑になるか分からないと母は言った。そのときは「なるほど、そういうものか」ぐらいにしか思わなかった。
この旅行を終えたとき、その大切さが身に染みて分かった。そういえばTはいつも必ず電話の最後にありがとうと言っていたし、何かあるとすぐにごめんと言ってくれた。私はその2つの言葉を普段ちゃんと口に出して伝えられているだろうか。たぶんできていないと思う。
これからはちゃんと伝えられるようになろう。
まずは画面の前にあなたへ、ここまで読んでくれてどうもありがとう。