早速新たな案件に取り掛かる。最後の最後に一番面倒なものを持ってくるとはなかなか憎い演出をする。
今日中に終わらせる勢いでカタカタやっていたが土台無理な話だった。とはいえ残りは1ページ。明日にはきっと終わるだろう。
きっと新たに依頼がやってくることはもう無いはずだ。たとえあったとしてもMに託そう。そして僕はあの小説を書き進める。
思いがけず旧友のAから連絡があった。この一年ほどずっと体調を崩していたらしい。彼と最後に会ったのは5年前。親父が倒れる約1ヶ月前のことで、秋葉原の大して美味くもない飲み屋でタイ旅行の話なんかをしたっけな。
彼は当時まだバンドをやっていた。そして確かネットで知り合ったという若干メンヘラ気味な彼女と高円寺の古びたアパートで同棲していた。
あれから5年。振り返ってみれば色々なことがあった。思考も習慣も何もかもが変わった。今の僕らはほとんどもう他人のようなものだろう。
それでも会えばきっと、そういう変化さえ笑いの種にして昔のように笑い合うのだろう。だって僕らは親友だから。