天女座に着くと一匹の猫がいた。近づくと非常階段下まで逃げて行った。覗くとあちらもまたこっちを見ていた。
天女座ではフランクかつフレンドリーな女性が応対してくれた。話の流れからプリンターの調子を見ることになった。するとお礼に飲み物をサービスしてくれた。
それから飼っているフクロウを間近で見せてもらえることになった。触ってみると予想に反してもふもふとしていた。目がビー玉みたいだった。貴重な体験だった。
外に出ると猫は三匹に増えていた。皆一様に甘えた声で鳴くが近づくと散り散りと逃げてゆく。この奔放さがたまらにゃい。しばらく戯れたあと徐福の墓へ向かった。
片側は崖というワイルドな巻道を車でゆっくりと降りてゆくと、先ほどまでポツリと眼下に見えるだけだった集落が目の前に忽然と現れてきた。頭上を仰げば遥か先に巻道の入り口が見えた。あそこからここまで降りて来たのだと思うと感慨深かった。
理想の場所を探し求めるのではなく、自ら選んだその場所を理想的なものにする。その心意気さえあれば人間はどこでだって暮らしていける。帰り道に見た七里御浜と夕焼けはこれから先二度と忘れることはないだろう。お金をかけなくたって十分贅沢は味わえる。