あっという間に2ヶ月が過ぎた。色々なことがあって色々なことを考え続けた日々だった。例えるならそれはゴールのないマラソンのようなものだった。長いこと走ってきたつもりだが未だにどこにも辿り着けていない。

 

後悔は微塵もない。この地を選んでよかったと心から思う。そう思えたのは生まれて初めてかもしれない。ようやく居場所を見つけることができた。そのことが何よりも嬉しい。

 

じゃあなんで心はすっきりとしないままなんだろう。それはやりたいことをやれていないからだ。僕はここで黙々と小説を書き進めるつもりだった。ここでならそれができると思っていた。それなのに日々の生活に追われるばかりで、一行も書き進められていない。

 

実家を出たことでやるべきことがうんと増えた。そのことは別に面倒だとは思わないしむしろ有難いとさえ思う。要はバランスの問題だ。生活ばかりに精を出しても心は満足してくれない。

 

夕方近くの海まで散歩に出る。波の音を聞きながらとぼとぼ歩いていると様々な考えが湧き出てくる。その内なる声は僕をこれでもかってくらいに発奮させる。そうして家に帰るとすぐにまたいつもの生活に囚われてしまう。海辺で抱いたあの強烈な創作衝動は、夜食を作ると言う他愛もない行為に取って代えられる。

 

この生活に不満はない。そこに問題の原因がある。人生は有限だ。成すべきことを見誤らないように。