6日目。起きたのは10時近く。掃除と洗濯を終えて、さて今日は何をしようと思案しているとたかやがどこかへ行きたいと言ってきた。それならばと那智の滝を見に行くことを提案。

 

手早く身支度を終えて一旦家へ戻った。寝ている山ちゃんにまたねとそっと声を掛けた。行き方を調べると色々あるようで、それによって待ち時間も到着時間も全く変わってくることが分かった。

 

しばらくスマホの画面を見つめていたが、段々と面倒くさくなってきたのでバスの時間だけメモしてすぱっと電源を切った。

 

11時半ごろ早めの昼食。たかやはまたもカレー、自分はいつもの卵焼き。食べ終えてゆっくりしていると時間が押していることに気付く。慌てて家を出て小走りでバス停まで向かう。

 

マウンテンパーカーだけでは寒かった。山の上に行ったらどうなってしまうんだろうと一抹の不安を覚える。バスに乗ること30分、新宮に到着。駅前の観光案内所で那智までの行き方を尋ねる。

 

電車は今行ってしまったところなのでバスを乗り継いで行ってくださいと説明を受ける。勝浦まで行かずに那智駅で降りること。そこで那智山行きのバスに乗ることなどを時刻表の書かれた紙を示しながら懇切丁寧に教えてくれる。

 

案内所を出て「それで次に乗るバスは何時発だっけ?」となり再びスタッフに尋ねる。呆れた感じで14時5分ですと教えてもらう。見慣れたはずの新宮の街並みもバスの車窓から見るとまったく違ったものになる。外国人旅行者がぽつぽつといて何だか自分まで旅行しているかのような気分になった。

 

那智駅では5分と待たずに次のバスに乗り継ぐことができた。15時前に到着。まずは長い階段を登り那智大社へ。なぜかミニスカートの見えそうで見えないあの感じがいいといった話で盛り上がる。

 

境内にはそこそこ人がいた。やはり寒い。三重塔の方へ向かい車道を下る。途中、那智の滝と書かれた看板を見つけその先の石段を降りる。降りた先は滝の入り口真ん前。滝に近づくにつれ寒さはより一層厳しくなってきた。夏だったら有り難いのに。

 

彼はしばらく滝に見入っていた。あの滝を見て彼は一体何を想っているのだろう。その間も観光客が入れ替わり立ち替わり記念写真を撮っていた。彼が後ろを振り向く頃にはもう全てが一巡していて、彼がいつからそうしているのかを知る者は一人もいなかった。彼はえらく感心している様子だった。ここに連れてきて良かったと心から思った。

 

大門坂を下りバス停を目指す。二人で歩くとあっという間だった。おそらく20分もかかっていないと思う。一人で歩いた時はとても長く感じたのに。バス停に着くと外国人夫婦旅行者に日本人が声を掛けていた。それから車の中へと消えていった。きっと駅まで送っていったのだろう。あんな風に自然と善意を示せるようになれたらいいなと思った。

 

夕食は山ちゃんを交えてトマオニで。待ち合わせ時間を20分過ぎても彼が現れる気配はなく、注文カゴの満たされたタブレットは先ほどから定期的にブザーを鳴らしていた。ついに耐え切れなくなって注文ボタンを押した。するとそのすぐ後に彼が現れた。

 

ドリンクバーを飲みながら、かつてガストでぐだぐだと過ごしていた頃のような気分で語り明かした。山ちゃんの好きなタイプやこれまでの恋愛事情などについて。いつもどおり閉店時間まで居座り続けて23時ごろ帰宅。

 

ポッドキャストのこと、面白かった海外ドラマ、好きなバンドベストスリーなどについて話す。たかやはレディオヘッド、ウィーザー、マイブラ。自分はピクシーズ、スティッフリトルフィンガーズ、ザ・フー。知り合って20年近く経つけど、まだまだお互い知らないことだらけだ。1時頃、就寝。