生きるとは何か。

言葉とは何か。

 

ほとんどの人は現実に飲み込まれ疑問すら持たなくなってしまうが、彼は生涯にわたりそのことを自問し続けた。

日常は思考の邪魔をする。しかし、そもそもこちらが日常にお邪魔しているのだ。

 

言葉があるから概念が生まれる。欲望があるから争いが生まれる。世の中はこんな風にして正と負のバランスで成り立っている。

 

その最たるものが生と死だ。

 

死ねば楽になるというのは全くの妄想。その保証はどこにも無い。もしかしたら死んだあともずっと苦しみが続く可能性だってある。

 

しかし死んでみないことには分からない。こんな大博打をするぐらいなら黙って生きていた方がよっぽどましだ。それに望む望まないとに関わらずいつかは必ず死ぬのだから。

 

家族も、恋人も、資産も、高級車も、豪邸も、健康も、知識も、名誉も、すべて無に帰る。所有できるものそれ自体には何の価値もない。

 

何も持っていないことは決して不幸ではない。何も持っていないことを不幸と思うことが不幸なだけ。

川崎に帰ってから中野と軽くお茶をした。