だいたいの場合において芸術家は「生きるとは何か」という問いについて明確な答えを出さない。答えを出してしまえば創作目的を失うことになるわけだから無理もない。だから仮に答えが分かっていても延々と問い続ける。

しかし人生そのものに意味が無いとしたら、芸術とは一体何なのだろう。実は全く高尚なものではなく、息をするのと同じただの行為に過ぎないのかもしれない。

悩みや苦しみが全くない人はこの世に一人もいない。いつまで続くのだろう。そう考えるだけでどっと疲れてしまうもの。願えば他人は手を貸してくれるかもしれない。でも自分を救えるのは自分だけ。

悩みや苦しみの渦中にいるときは、他人が自分と同じような悩みや苦しみを抱えていることには全く気付かない。周りがみんな性格の良い善人のように見えてこんな意地悪いことを考えているのは自分だけだとも思うだろう。

でも決してそうではない。それを知るために現代美術はある。あの一体何を描いているのか分からない絵の正体は芸術家の心の葛藤である。形の無いものを描いているのだから分からなくて当然ともいえる。つまり芸術家とは苦悩を芸術に昇華させた人のことをいう。

そこにこそ大切な学びがある。
苦悩にどう反応するかということ。