あの震災から今日で丸10年。当時のことは今でもはっきりと覚えている。ウェブデザインのスクールを修了した翌日で、無職だった私は部屋で呑気にナンバーガールを聴いていた。カラスが何やら騒いでるなと思った次の瞬間、いきなり部屋全体が大きく揺れ始めた。

 

ちょうどスマホに買い替えたばかりで、始めたてのSNSでとにかく情報をかき集めた。火事場泥棒が多数出没という根も歯もない誤情報を拡散する悪意なき人々、人工地震だと主張するオカルト野郎が現れたりとまさにお祭り騒ぎだった。

 

そのうち停電になってそのまま夜を迎えた。リビングのテーブルにはキャンドルが並べられ、緊急事態ではありながらも穏やかな雰囲気を醸し出してくれていた。ベランダから見える建物は全て光を失っていた。夜空がやけに眩しかった。

 

翌日、近くのスーパーやコンビニへ行くと棚は見事にすかすかだった。日常はいともたやすく失われるのだと知った。

 

数日後、YouTubeで津波の映像を見て思わず声を失った。真っ黒な波が全てを容赦なく飲み込んでいった。自然の前では人間でさえ虫けらに等しい。

 

10年がこんなに短いものだと思わなかった。中身はあの頃とほとんど変わっていない気がする。これからの10年はどうなってゆくだろう。