皆もちろん他人である。しかし、何かのきっかけでたまたまこの作品の上映を知りここに今日こうして集まった彼らのことを、私はどうしても全くの赤の他人だと思うことができなかった。
寺山修司の生い立ちを知り、芸術とはやはり苦悩や孤独感から生まれるものだと確信した。人々の意識が変われば世界もきっと変わると純粋に信じていたのだと思う。
芸術家は満たされるほど空になってゆくことを知っている。ゆえに安定した生活から距離を置き他人の評価に浮かれることもない。作品が出来上がる度にまた新たな葛藤が生まれる。車輪の中をひたすら走り続けるようなものだ。
何より幸福なことは、芸術が必要とされなくなることではないだろうか。
上映が終わると同時に皆足早に去っていった。私たちはやはり赤の他人だった。