失われた時を求めて第一部読了。小説の面白さを久しぶりに味わうことができた。それはただあらすじを辿るだけでは得られない喜びだ。作品の中で起こる一つ一つの出来事に対して主人公が何を感じどう応えてゆくか。その描写にこそ面白さがある。

 

この作品は彼にしか書けなかった。違う言い方をすれば、彼が自然に誠実に書いた結果この作品が生まれた。もし誰かのためや誰かのように書いていたとしたら、誰でも書けるような作品になっていただろう。原稿よりもまず向き合うべきは自分だ。

 

私はちゃんと向き合えているだろうか。誰かの影を追ったり余計な色を付けたりしていないだろうか。疑いと迷いは何度でもやってくる。急に無駄なことだと思えてきたり、ちっとも前に進めなくて諦めようとしたり、他の作品に心をぽっきりと折られたり。生むは苦しい。

 

転んでも無理に起き上がらなくていい。這いながらでも前には進めるのだから。ゆっくりでも続けていれば、そのうちきっと一つくらいは良いことあるはずさ。

 

●執筆メモ

jbの続き。西荻窪の日高屋で出会った女の子との回想場面。こうして書いてみると本当に色々なことがあったな。それでもまだ半分にも満たない。この物語は一冊に収まるのだろうか。