朝一服をしながらふと、またいつも通りで終わるのかなと思った。その瞬間、一気に希望が遠ざかっていった。僕に何ができるだろう。まるで20代前半の頃の僕みたいなことを呟いて思わず笑った。

 

決意はナマモノだ。少し時間を置くとすぐだめになってしまう。次第に、どうしてあんな馬鹿げたことを考えちゃったんだろうと冷静になり始める。こうしてまた日常へと引き戻されてゆく。

 

物事はずっとシンプルだ。自分がそれを難しくしてしまっているだけ。たくさんのことを調べてきたが今やるべきことは実際それほど多くない。リュックを買う。モバイルバッテリーではなくUSB充電器を買う。熊野行きの新幹線のチケットを買う。安めの宿を2泊分取る。以上これだけ。

 

おすすめのリュック、熊野古道、新幹線のチケットレスや乗り換え方法など色々とまた調べたくなってくるかもしれないが、もうこれ以上はやめておく。調べれば調べるほど出発日が遠ざかるだけだ。

 

失敗したっていい。だって旅なんだから。むしろ旅をするのはそのためだと言ってもいい。完璧を求め過ぎる自分に恥をかかせてやろうと思うくらいでちょうどいい。

 

結局リュックと充電器を買い終えたときには夕方になっていた。

 

しまぐらしでよく話す子ともっとたくさん話したいと思った。でもあいにく僕はLINEをやっていない。それで代わりになるメッセージアプリを探すことにした。IDで追加できてセキュリティに強くそこまでマイナーでない。そうなると選択肢はTelegram一択だった。

 

早速登録してみるとふいにメッセージが届いた。おそらくこのアプリを始めた時点で、僕の電話番号を知る人全員にそのことが通知される仕組みなのだろう。

 

メッセージを開くと直感的にM氏だと分かった。まさか再び話すことができるなんて思わなかった。僕はM氏の雰囲気が大好きだった。かつて誰かが氏のことをイギリスの片田舎の不良みたいだと評したことがあった。まったくその通りだと思った。

 

M氏と最後に会ったのはいつだったろう。おそらく6年以上前のことになるかもしれない。場所は確か登戸だった。時間は無情にも流れていった。その間に僕らは夢から現実へと引きずり出されてしまったが、それでもきっと僕らの中にあるものはあの頃から何も変わらない。

 

聞けばM氏もつい最近Telegramを始めたとのことだった。きっと神の戯れだと思った。M氏と再会させてくれたことに心から感謝します。ザーメン。