熊野で家探しを始めてからあっという間に10日が過ぎた。その間、様々な出会いがあった。おかげで何年かぶりの人疲れに襲われた。

 

ここ熊野には人を惹きつける何かがある。ただ、誰にでも感じられるわけではない。ハマる人にはハマる。要するにインドのゴア地方のようなものかもしれない。なかでも社会の流れに違和感を抱く人は特にハマりやすい気がする。

 

家探しの方は上手くいっていない。いくつか物件を見せてもらったがあまりピンと来るものはなかった。アパートも見たし平屋も見た。だけどどうしても自分がそこで暮らしている想像ができなかった。

 

まさかここに来てまた迷い始めることになるとは思わなかった。今泊まっているゲストハウスのオーナーY氏のシェアハウス計画がどうもやはり気になっている。一人で家を借りて住むよりも、実際そっちの方が自分には合っているのかもしれない。

 

本音を言えば、本当に一人で暮らしていけるか不安になった。現地を訪れて日常に忍び込んでみて気付いたことは、場所が変わってもそれほど自分は変わらないということだった。町の規模が小さくなればその分動きやすくなるだろうと呑気に思っていた。でも全然そんなことはなかった。

 

家を探しに来たはずなのに、ここ何日間は実家にいるときと同じような日々を過ごしている。散歩をして喫茶店に行って小説を書いて少しウェブの修正をして、といった感じに。違うのは歩けばすぐに海があるということ。

 

足りないのは飛び込む勇気と属する覚悟。もう少し粘ってみよう。