そうだった。約束って別に頑張ることじゃなかった。僕はそんな当たり前のことさえすっかり忘れてしまっていた。こどもの頃は「また明日」の口約束だけで十分だった。
約束はもっと気軽で良い。僕はよく「相手の事情を配慮して誘わないでおこう」と自分を欺く癖がある。でも実際は断られて傷つくのが怖いだけだ。それによって無価値感を覚えるのがとにかく辛い。
ただ、よくよく思い返してみれば小学校の時は休日にもなるとむしろ自分からどんどん誘いの電話をかけていた。それで断られたとして実際に傷ついたか。全然まったく。じゃあ次はあいつにと思うだけだった。
そうなると断られて傷つくのが怖いという理由も何だか疑わしくなる。何かもっと他に隠していることがありそうだ。僕が本当に恐れていることは何だろう。そもそもそんなものはあるのだろうか。
自信を失ったのはいつからだった?そのきっかけは?誰かに何かを言われたから?いいや違う。
一人が好きになったのはいつからだった?そのきっかけは?誰かと何かがあったから?いいや違う。
僕はたぶん、一人でいたいがために自信を無くしたのだと思う。何か壁にぶち当たってもその一言でチャラになる。僕にとってはまさしく魔法の言葉。そうしてありもしない自信という存在を信じ続けてきた。
ここ2年の間に僕も少しは人間らしくなれたように思う。これまでたくさんのものから逃げてきて、たくさんの機会を逃してきた。その事実は変えられないし取り返すこともできない。できることなら過去の自分をフライパンで思いっきりぶん殴ってやりたい。でも、それ以上に感謝もしている。そのおかげで今の自分があるのだから。
毎日が人体実験、今はそんな風に思いながら一日一日を生きている。これまでたくさんの本を読んできたが、よくよく考えてみれば自分もその中の一冊に過ぎなかった。全ての瞬間が物語。無駄なことは一つもない。これまでだってこれからだって。