久々に桜木町へ。ちょうど大さん橋へ向かおうとしていた頃、母から珍しく電話があった。親父が自ら自分の腹を刺した、と一言告げられる。状況が全く飲み込めないまま、急いで家路についた。

病気を患って以降、親父はあの時死んでおけばよかったのになあと時々口にすることがあった。思い詰めた様子ではなくさらっと冗談交じりに言うものだから、こちらも大して重く受け止めることはしていなかった。

 

思えばあれは親父なりのSOSだったのかもしれない。もっと真剣に向き合うべきだったと今になっては思う。

病気によって親父の日常は一変した。倒れた時の記憶は一切なく未だになぜ自分がこうなったのかも理解できていない。そんな理不尽な苦しみとずっと向き合い続けてきたことを思うと、本当に胸が張り裂けそうになる。

当たり前なことなんて一つもない。それさえも当たり前すぎて普段なかなか意識することもない。当たり前でなくなってからようやくそのことに気付く。

親父は幸い軽傷で済んだ。そして母と私には重い課題が残された。