朝8時にKが車で迎えに来てくれた。母から差し入れてもらったマウントレーニアのカフェラテを二人で飲みつつ、いざ大山(神奈川)へ向かう。
私は筋金入りのペーパードライバーなので今回行きも帰りも一切運転しない。さすがに申し訳ないので朝昼晩の飯代はすべて出すぞと心に誓った。
車に乗るのは久しぶりだったが標識とか時差式の信号とか全く意味が分からなかった。みんなあれを瞬時に判断しているのだからすごいよなあ。
ナビの到着予想では下道で行っても2時間ほどだった。16号線、246号線、603号線、611号線と進むにつれて次第に景色がのどかになってゆく。朝一のカフェラテが効いたのか途中猛烈な尿意に襲われる。しかしコンビニは見当たらない。
シートベルトの位置を調整し下腹部への刺激をなんとか抑える。意識してはいけない。そう思えば思うほどさらに存在感を増す尿意。こういうときに限っていつもは寡黙なKがやたらと饒舌に話しかけてくる。あ、うん。そうだねー。などと素っ気ない返事を繰り返しつつコンビニの出現を願った。
それから30分ほど経ったころ、ようやくセブンイレブンがお目見えした。闘いはようやく終わった。だが最後の最後まで気は抜けない。膀胱を少しでも刺激しないよう、能のすり足の要領で店内奥のトイレまで突き進む。・・ふぅ。まるで山を登り切ったかのような達成感。その後Kの朝食と行動食などを買い再び出発した。
しばらくすると遠目にうっすらと山のシルエットが見え始めてきた。見慣れないその光景に思わず心を奪われる。
ところで車内にはZARDが流れていた。全くそのことに触れずにいると、唐突にKが「ZARDいいよね。この前ベストアルバム買ってさ」などと喋り始める。
確かに良い。というかものすごく良い。ZARDといえばドラゴンボール。ドラゴンボールといえばWANDS。私たちはまさにそういう世代。
ここでなぜか小学生の時の出し物の話になった。私は玉置浩二の田園に振付を付けてKとHと3人で歌ったことを今でもはっきりよく覚えている。田園を聞くたびに椅子に登ってジャンプしたあの日のことを思い出す。で、その話をするとKは全く覚えていないらしい。
その逆にKは出し物といえばポリンキー事件だという。でも私は全くそのことを覚えていない。Kの話によれば、当時ポリンキーというお菓子が流行っていてそのCMソングをアレンジして歌うことになった。
だが、私とKは本番になってふざけてしまいそれを一切台無しにしたということらしい。結果的に担任の水谷先生にもひどく怒られ散々だった、と。
ポリンキーが流行っていたことは覚えている。確かそのCMソングの歌詞はこんな感じだった。
「ポリンキーポリンキー三角形の秘密はね、教えてあげないよ。ジャン」
どこかもやっとさせられる歌詞である。要するに知りたきゃ食べてみなというツンツンスタイル。
当時のKはまさに悪友だった。悪ふざけやいたずらばかりしていた。私も面白がってそれに加わっていた。友人のデジモンを集中的に攻撃して死なせてしまったり、自転車のサドルを抜いて原っぱにぶん投げたり、猫とセミを戦わせてみたり、他にもごろごろ。
今思うと本当に畜生だった。マジキチ。あたおか。今後何か天罰が下ったとしてもお互いに文句は言えない。
緩やかな坂道を上がると第一駐車場という看板が見えた。同時に満車という文字も。平日とはいえ祝日なのだからやはりそうなるか。
第二駐車場へ向かう途中、おじさんが話しかけてきた。第二も空いてないよ。ほらこっちこっち。そう手招きされ旅館らしき場所へ駐車させていただく。千円也。お礼を言いいざケーブルカーへ。
次回に続く。