そしてタスク管理ツールを使いだした。初めのうちは良かった。やるべき作業が目に見えて減っていくのはすこぶる快感だった。
そのうち仕事以外のこともタスクとして書き込むようになった。例えば仕事帰りにヨーグルトを買うとか、友人に誕生日メールを送るとか、23時に寝るとかとにかく思いつく限りのことを書き足していった。
そこからおかしくなった。「やりたいこと」と「やるべきこと」の境界が分からなくなり何をしても無感覚になった。このときから日常のあらゆることは「達成したか」「そうでないか」でしかなくなった。
無味。無乾燥。無為。無感動。これがタスク人間の成れの果て。ただの人間に戻れる日は果たして訪れるだろうか。
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そういえば中学の時「たすく」という名前の友人がいた。学校までわずか徒歩1分の場所に住んでおり、体育祭当日に雨が降った時は大活躍してくれた。
というのも開催有無を知るには、中学校入口に貼り出される通知をわざわざ見に行かないといけなかったからだ。彼はさっと見に行って友人みんなに電話で教えてくれた。
彼は今何をしているのだろう。こうしてまた一つ新たなタスクが書き加えられたのであった。