振替口座の住所変更をするため郵便局へ行った。よほど珍しい手続きだったのか、局員たちはマニュアル片手にあたふたとしていた。

 

待合席に腰かけてしばらく待っていると、代わる代わる客がやってきた。手紙を出す人、荷物を送る人、お金を引き出す人。訪れる理由は皆様々だ。局員たちはせっせと手際よくその要求に答えていた。

 

時にはきっと僕が持ち込んだような厄介事に出会うことだってあるだろう。でもそれが仕事の範疇である限り、彼らは決して断らないし断れない。つまり仕事とはそれ自体に仕えることだといえる。

 

仕事様の前では誰もが子犬のようになる。彼が一言命じれば女の子だって喜んで服を脱ぐ。でも彼は気付いている。自分に忠誠を誓う者は一人もいないということを。

 

それでも彼は報酬という果実を与え続ける。そして僕らは当たり前のようにそれを貪り続ける。彼がこの王国を治める限り、僕らは不自由で安泰だ。