正しいと信じてきた道がそうでないと気付いた時、他人が歩んできた道の方が正しかったのではないかと迷いが生じる時、そこに底なしの絶望がある。半端に歩み寄って相手の土俵に足を踏み入れた時、そこにもう自分はいない。
マルコ氏と7年ぶりの再会。案外気まずさはなくすんなりと打ち解けられた。こうして誰かと会うのは二ヶ月ぶりだった。登戸駅で待ち合わせて一路向ヶ丘遊園のシャノアールへ。雰囲気が抜群に良くてそれだけでもうこの街に住みたくなった。
これまでのこと、あの頃のこと、現状のことについて止め処なく話した。僕らの状況はあの頃と全く変わってしまったけれど、お互いの中にあるものは全く変わっていなかった。
後から思い返すとだいぶ話し過ぎてしまったように思う。あの頃のことを題材にした小説を書いていることも話した。誰かに話したのは初めてだった。でも彼にだったら別に構わないと思った。ついでに少しだけ読んでもらった。クスっと笑ってくれたのを見て安心した。
話していて思ったのは現実的なことを気にしているのは僕のほうだったということ。例えば年齢とか結婚とか仕事とか。自分が一番聞かれたくないことを案外他人には平気で聞いてしまうものなんだなと。
時間はあっという間に過ぎていった。ここを出て電車に乗って家に帰ればいつものあの日常が口を開けて待っている。飲み込まれるのは一瞬のことで、飲み込まれたことにさえ気付かない。
おかしいぞ、今日は何だかぽんぽんと言葉が浮かんでくる。まるであの頃のように。そういうわけで、このまま良い気分で終わりたいと思う。きっとそれぐらいがちょうどいい。
●今日のこと
・マルコ氏と会う