いつの頃からか心を強くしたいと思うようになった。それ以来、哲学、心理学、自己啓発、宇宙、宗教に至るまでありとあらゆる本を手当たり次第読み漁っていった。読んでいる間は変われた気がしてそれがなんとも心地よかった。

 

でも、本を閉じればすべて元通り。日々瞑想やお祈りをしてもそれは同じだった。以前と変わらない弱虫の自分がずっとそこにいた。

 

のめり込んでいった理由はただひとつ。そんな自分から一秒でも長く離れていたかったから。いつかは強くなれるはずという淡い期待を持ちつつ。

 

そんな生活が5年ほど続いた。端から見れば苦行のような日々だったが、まったく辛くはなかった。自分は正しい方向に向かっているという自信があったから。

 

その間には価値観もすっかり変わった。友人との話も合わなくなっていった。くだらないと見下すようにさえなっていた。だんだん友人と会うこともしなくなった。

 

もちろん、これでいいのかと思うこともあった。でも途中でやめたら今まで積み上げてきたものが全部無駄になるとも思った。それにバチが当たるような気もした。

 

でも自分が間違っていたことに最近ようやく気付いた。弱くたっていいやと思えるようになった。これまで学んだことを全部手放すことにした。今の自分を否定している自分自身を愛することにした。

 

大切なのは今この瞬間。その意味がやっと理解できた。またいつの日か迷子になったときの自分に宛てて。